2025.12.17
AIエージェントにFXの取引戦略を考えてもらった
はじめに
グループ研究開発本部・AI研究開発室のS.Sです。
最近はAIエージェントが流行っているので、今回の記事ではFXの取引戦略の実装からバックテストまで一気通貫でやってもらうというのを試したいと思います。
プロンプト
検証ではGoogleが最近公開したAntigravityを使うことにし、早速以下のようなプロンプトを投げてみます。
自律的にFX投資戦略の検証を行なってください。 対象の通貨は流動性が高い先進国通貨とします。 データの取得・戦略の検証も含めて許可を求めずに実施してください。 パフォーマンスはSR・MaxDDで評価し、リスクの低いシンプルなルールベースの戦略が望ましいです。 定期的なパラメータチューニングが必要なく、長期で利用できる戦略を考えてください。 データソースはyahoo financeから取得したものでOKです。
すると一連の検証コードが出来上がりました。

上記のコードをベースにしばらく分析した結論は以下のような結果でした。
6つの主要通貨ペア(EURUSD, GBPUSD, USDJPY, AUDUSD, USDCHF, USDCAD)に対して、7つのシンプルなルールベース戦略を検証しました。
検証期間:
- インサンプル期間: 2010-2020
- アウトオブサンプル期間: 2020-2025
- 全期間: 2010-2025(約15年間)
主要な発見:
- 最高パフォーマンス: USDJPY VolatilityBreakout_60d(SR: 0.47, MaxDD: -16.5%)
- 最低リスク: USDCHF ValueMeanReversion_504d(MaxDD: -13.3%, SR: 0.31)
- 安定性: 平均回帰戦略(ValueMeanReversion)が比較的安定したパフォーマンスを示す
この手の検証のよくある流れと同じくインサンプルでよい戦略を選び、最後にアウトオブサンプルで評価するという形になっているのはよさそうな感じです。
上記でベストの結果だったUSDJPYの累積収益は以下のような結果となっており、とりあえずは動いてるといえそうです。

以下では検証した手法とその結果について詳しくみていくという流れで進めたいと思います。
検証した戦略
- Momentum: 現在のプライスが過去N日前のプライスより上昇していればロング・下落していればショート
- Value Mean-Reversion: 現在のプライスが過去N日間の長期平均プライスより下落していれば反対に動くと読んでロング・逆ならショート
- Volatility Breakout: 現在のプライスが過去N日間の高値を上回ればロング・底値を下回ればショート
検証の結果も踏まえると各戦略には以下のような特徴があり、よく使われるMomentumも多少は通貨ペアとの相性があるため、実用には一工夫必要そうという感触でした。
✅ 長期運用に適した戦略
- ValueMeanReversion_504d(2年平均回帰)
- パラメータが固定(504日)
- 経済的根拠が明確(購買力平価への回帰)
- 再調整不要
- VolatilityBreakout_60d(60日ブレイクアウト)
- パラメータが固定(60日)
- シンプルなルール
- 過剰最適化のリスクが低い
⚠️ 注意が必要な戦略
- Momentum戦略
- 通貨ペアによって結果が大きく異なる
- 定期的なモニタリングが必要
- Combined戦略
- 単一戦略より劣る結果
- 複雑性が増すだけでメリットが少ない
検証した通貨別の特徴
上記のプロンプトでまとめてくれた特徴は以下のような感じでした。
やはり高金利通貨ロング・低金利通貨ショートというパターンが比較的うまくいってそうです。
EURUSD(ユーロ/米ドル)
- 特徴: 最も流動性が高いが、戦略パフォーマンスは中程度
- 最良戦略: Momentum_126d(SR: 0.08)
- 推奨: 他の通貨ペアの方が優れた結果
GBPUSD(英ポンド/米ドル)
- 特徴: ボラティリティが高い
- 最良戦略: ValueMeanReversion_504d(SR: 0.09)
- 推奨: 平均回帰戦略が比較的有効
USDJPY(米ドル/日本円)
- 特徴: トレンドが明確で、ブレイクアウト戦略に最適 ⭐
- 最良戦略: VolatilityBreakout_60d(SR: 0.47)
- 推奨: 最も推奨される通貨ペア
AUDUSD(豪ドル/米ドル)
- 特徴: コモディティ通貨、ボラティリティが高い
- 最良戦略: ValueMeanReversion_252d(SR: 0.23)
- 推奨: 平均回帰戦略が有効
USDCHF(米ドル/スイスフラン)
- 特徴: 安全資産、平均回帰傾向が強い ⭐
- 最良戦略: ValueMeanReversion_504d(SR: 0.31)
- 推奨: 低リスク戦略に最適
USDCAD(米ドル/カナダドル)
- 特徴: 原油価格との相関が高い
- 最良戦略: ValueMeanReversion_252d(SR: 0.18)
- 推奨: 中程度のパフォーマンス
まとめ
今回の分析ではAIエージェントにFXの取引戦略を考えてもらいました。
出てきた戦略は長期でもワークするシンプルな戦略となっており、対象銘柄の知識などを組み合わせながら実際の取引戦略を考える上での叩き台にはなりそうな結果でした。
最後に
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